365のお題

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  046 キズナ (ちょっと変わった物語)  

 ノアに何もかも聞こう。
 そう決心して、私はノアを見つめていた。
 ノアも、私の真剣な様子に、いつもとは違って正座なんてして向き合っている。
『あなたのこと、あなたがいる組織のこと。……あの最初にノアを襲っていた人たちのこと。全部教えてほしい』
 私の問いに、ノアは頷いてくれたから。
 もう逃げたりなんかしない。
 私は、私がどういう状況にあるのか知りたいのだ。
 それが、どんな結果をもたらしたとしても。


「本当はね、私、迷ってるんだ。ノアのこと信じていいのかどうか」
 各局、私は思っていることを正直に話すことにした。
「お姉さま……」
「ノアのこと、好きだし、だけど、隠し事があるんじゃないかって疑っている」
 彼女に隠し事が1つもないとは思えない。私だって、変な男のこととか、間宮さんのこととかでノアに話していないことがあるのだ。
 お互い様な部分はあるんだろうけれど、それでもきちんと彼女と向き合いたいと思うほど、ノアに情が移っている。
「知らないところで、私が何かあなたたちに関わっているのなら、知りたいと思う」
 だから、と前置きして、私は男のことを正直に話した。
 間宮さんのことも。
「……鍵、と言われたのですか」
「そう。『あなたが私の鍵なのか』って」
 今でもその意味はわからない。
 そもそも何をもって『鍵』というのか。それさえも、あの人は教えてくれなかった。
「間宮、というのは、青い目をした人間のことですね?」
「あの人の目の色、知っているの?」
 言ってから、当然かもしれないと思った。彼らは、ノアたちとずっと戦っていたのだ。あの変な格好ではない間宮さんたちのことを調べていたとしても不思議ではない。
「一応、基本データは記憶されています」
 案の定の答えに、私は頷いた。間宮さんだけでなく、他の人間のこともわかっているのなら、あの男が誰なのかも聞けば教えてもらえるかもしれない。
 でも、今は別のことだ。
 ずっと私の心の中で引っかかっていることを聞きたい。
「私は、ノア以外の誰かに、監視されているの? 組織の人とかだけじゃなくて、いろんな人に」
 ノアの目が大きく見開かれた。
 ああ、やっぱりそうなんだ。
「……組織に関しては、監視は、確かにされていました。ノアは反対だったんですけれど、お姉さまに危険が及ぶかもしれないって言われて」
「危険?」
「狙われるかもしれないって。……ノアは、単純にお姉さまが私達の戦いを見てしまったからだと思っていました」
 私だって、最初はそうだと思っていた。だから気楽にしていられたし、真剣に考えていなかったのだ。
「でも、それ以外の人達のことはよくわからないのです。ノアも気配を感じていましたけれど、追いかけて調べてみようにも、いつも逃げられてしまって」
 そうか。いまさらなんだけれど、ノアの姿が時々見えなかったのは、逃げた相手を追いかけていたせいなんだ。気まぐれにいなくなるのかと思っていたけれど、違っていたってことか。
「それに、そういう変な人たちが現れたのは、ノアとお姉さまが一緒に暮らし始めてすぐではなかったから」
「そうなの?」
 よく次期を聞いてみると、それは私が間宮さんと直接会った頃と一致する。
 だとすると、きっかけは間宮さんが口にした『鍵』ということと関係あるのだろうか。
 どちらにしても、私には情報が足りない。
 何もかも、わからないことだらけだし。1つ1つ知っていくしかないのかもしれない。
 まず手近なところといえば、ノアの所属する組織とやらだ。
 いったい組織とは何なのか教えてというと、ノアは緊張した面持ちのまま頷いた。
「組織、と言っていますが、特に正式な名前があるわけではないんです」
 便宜上そう呼んでいるだけなのだとノアは言う。
「最初は、私たちみたいな、人でないもの、あるいは人からはみ出してしまった者たちが集まった小さな集団という感じだったそうです」
 それこそ遙か昔から存在していた人外の者たちは、最初から強力しあっていたわけではない。
 それが、何年か前現れた魔物によって、統一されたということらしい。
「その人が、今のあなたのボスってわけね」
「はい。それまで私達は敵に追い回されて一方的にやられるだけだったのですが、あの方が現れてからは、そういうことも少なくなりました」
 ボスが現れるまでは、みんなバラバラだったってこと?
「でも、私は下っ端ですから、いつも命令通りに戦っているだけなんです。あの方の目的も、わかりません」
「世界征服とかじゃないの?」
「さあ? そういう話は聞いていないです。ただ、敵があの人たちだと、それだけです」
 ノアの情報だけだとやはり限界があるってことかな。
 だとすると。
「あなたたちのボスに、私は会いたいと思う。可能かな」
「それは……」
 ノアは迷っているようだった。
 それはそうだろう。
 組織の一番エライ人に、たかが一般人(だと思う)が簡単に会えるとは思えない。滅多に外に出てこないラスボスみたいなものだろうし。
 ノアは考えていたようだが、やがて小さく頷いた。
「時間を下さい。話してみます」
「うん、ありがとう」
 どう転ぶかはわからない。
 でも、私はノアのことを信じることにした。
 少しでも、私達の間に信頼という名の絆があることを信じて。

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