3周年企画

Novel | 目次

  花月  

 桜並木を二人で歩く。
 空には、丸くて大きなお月様。
 月に照らされて、長く伸びる私の影と、あなたの影。
 そして、満開の桜の木。


 誰もいないから、二人で歩いている。
 あなたと私と、今この瞬間には、二人だけ。
 人の姿の私と。
 人でない姿のあなたと。


 手をつなぐことは出来ないけれど。
 並んで歩くことしか出来ないけれど。
 でも、私は幸せだ。
 あなたといるから幸せなんだって、わかってる。
 

 ぐるりと町内を1周して、私たちの花見は終了した。
 来年もまた、こうやって二人で歩ければいいね。
 私の言葉に、人に戻った彼は笑って頭をくしゃくしゃとかき回した。


 来年じゃなくて、明日もう一度花見をしよう。
 今度は明るい日の光の下で、お弁当を持って出かけよう。
 あなたの言葉に、私は笑って頷いた。

お月さまと私」より 
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