空の見える場所で

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  2.昼寝  

 足音が聞こえる。
 古ぼけた家は、歩くたびにぎしぎしと大きな音がするが、足音の主である宙さんはあまり気にしていないようだ。
 俺が、昼寝といいながら、実は狸寝入りしていることを知っているからだ。
 そういうところは、彼女はまるで遠慮がない。
 昔から――それこそ遠い昔から、いつだって彼女は俺に対して遠慮がなかった。
 初めて会った時は生意気だったし、次に会った時は俺のこと忘れていたし、その次に会った時は些細なことで大笑いされた。
 でも。
 自然と口元が緩んでくる。
 いつだって、彼女が側にいると心地いい。
 出会ったときから今まで、彼女の態度は変わることはなかったし、これからも同じなんだろうと思えることが嬉しい。
 もちろん、彼女は俺の職業を知っているので、気遣ってくれることも多いけれど、大抵は普通の人を相手するように接してくれる。
 文句は言うし、優しくないし、遠慮もない。
 でも、俺をちょっとだけいい人と言ってくれて、甘えさせてくれて、張り飛ばしてくれる。
 それだけで、なんだか幸せだと思えてくるのだ。
 ああ、とても普通だな、と。


 縁側に寝転がってから、もう随分立った。
 家の中を移動していた足音が、段々近づいてくる。
「椋一さん」
 足音は俺の側で止まり、名前を呼んだ。
「椋一さん、こんなところで寝ていると風邪をひきますよ」
 心配するというより、どこか呆れたような声だ。
 そういうところも彼女らしい。
 俺は、起きようか、このまま寝たふりをしようか悩みながら、彼女の次の言葉を待つことにした。

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