空の見える場所で

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  10.お祭り  

 一番上の兄は、結構器用だ。
 誰かに教わったという話も聞かないのに、なんでもできるし、知っている。
 子供の頃、お祭りがある日になると皆に浴衣を着せてくれてるのも兄で、髪も綺麗に結ってくれた。
 私たちはみんな兄のことが大好きだったから、誰が一番に着せてもらうかでよく喧嘩をしたものだ。
 結局最後にはじゃんけんで決めることになって、今度は何回勝負かで揉めたりした。
 そんなことを思い出したのは、今日が夏祭りだからかもしれない。
 町はずれにある家だけれど、周りに民家がないわけじゃないから、時折、浴衣姿の女の子や親子連れが家の前を通っていくのだ。
「懐かしいなあ」
 思わずそう呟いてしまったのは、兄らしき少年が女の子の手を引いて歩いていくのが見えたからだ。私もあんなふうに兄や姉、あるいは弟たちと手を繋いで祭に行った。
 10歳を過ぎた頃、それに椋一さんが加わり、それはもう賑やかだったのだ。
 普段は買い食いにはうるさい兄も、この時はあまり文句も言わなくて、お小遣いの範囲内なら、ちょっと得体の知れない食べ物を買っても怒ったりはしなかった。
 あれから随分たって、ここ数年は兄や椋一さんと祭には行っていない。
 兄たちが皆成人したせいもあるし、忙しいせいもある。一番下の弟はまだ小さいから、一緒に行くことはあるけれど、他の弟妹たちは友達と出かけたりすることが多くなった。
 それでも、誰かが誘えば、嫌とは言わない気がする。
 友達と行くのも楽しいけれど、兄妹たちと行く祭りも、本当に楽しかったのだ。
 遠慮もないから喧嘩もしたし、お菓子の取り合いになったりもしたけれど、それさえも今では懐かしい思い出。
 いつかまたみんなで一緒に行ける日が来ればいいなと思う。
 例えそれが遠い未来だったとしても。
 兄妹と椋一さんで――もしかしたら、新しい家族も一緒に、あの頃のように祭に行くことが出来たら、きっと楽しいだろう。
 そんなことを考えながら、私は小さな兄妹の後ろ姿を見続けていた。

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